豊胸手術には、大きくわけて3つの方法があります。まず、それぞれのメリット、デメリットを簡単に紹介しておきましょう。
1つめは、シリコンなどで作られたバッグを大胸筋または乳腺下に挿入する方法です。バストの大きさや形を希望に近い形で作りやすいというメリットがあります。デメリットは、メスを使用する全身麻酔での手術であること、異物を挿入するのでまれに拒否反応が起きること、仰向けに寝た際の不自然な乳房形態などがあります。
2つめは、ヒアルロン酸を注入する方法です。ワキの付け根から粒の大きいヒアルロン酸を注射器で注入します。手軽な手術で日常生活への復帰も早いというメリットがあります。デメリットは粒の大きなヒアルロン酸は、触感が硬く、術後の感触に不満を持つケースがあること、ヒアルロン酸は体内に吸収されていくので1、2年で元のサイズに戻るという点です。
3つめは、痩身を希望する部位から脂肪を抽出し、バストに注入する方法です。異物を入れるわけではないので拒否反応も起きにくいのがメリットです。デメリットは、抽出した脂肪から水分、油分、血液などを取り除いて注入するのですが、その処理によっては注入脂肪の定着率に大きな差が生じます。注入脂肪の壊死やしこり、石灰化などを起きる可能性があります。
どの豊胸術を選択した場合でも、大切なのが術後のアフターケアです。バッグを挿入する方法以外は、メスも使っていませんし、傷口も小さいのですが、雑菌の感染には十分注意をする必要があります。いずれも、傷口の内部には「デリケートな状態の異物」が大量に侵入しているので、身体は、排除しようと反応します。
脂肪注入は元々自分の脂肪なので、異物ではありませんが、そこに血管が通っているわけでもなく、生体として定着できるかどうかの瀬戸際状態です。そこに雑菌が侵入すれば、生き残りの確率は大きく減少してしまいます。
まず、どの施術でも当日の入浴は禁止です。傷の小さな脂肪注入やヒアルロン酸注入なら、翌日からシャワーは可です。入浴は傷口がふさがる1週間後くらいが目安になります。
バッグ挿入は、傷口が大きいのでもっと時間がかかります。医師の診断に従い、入浴開始の時期を決めましょう。
また、化膿止めなど飲み薬が処方された場合は、きちんと飲みきるようにします。
術後は、どの方法でもバストに腫れ、むくみが生じます。皮下組織の下にバッグやヒアルロン酸を入れるのですから、当然、バストの皮膚は強烈に引っ張られることになります。異物と戦おうとする生体の反応と、皮膚の牽引が腫れ、むくみの原因になります。
腫れたり、むくんだりすると、なでさすったり、マッサージでほぐしたりしたくなりますが、術後しばらくは、圧迫固定し、安静にすることが必要です。
バッグを挿入した場所の周りに、カプセル皮膜が作られ、隔離したスペースが形成されます。その中でバッグが固定されると落ち着いた状態になるのですが、安静にしていないと、バッグの大きさに対して、スペースの大きさや形が合わなくなったり、バッグの位置がずれたりというトラブルに発展する恐れがあります。とにかく、バストに刺激を与えない、動かさないという安静が大切です。
バッグに対する拒絶反応が大きい場合、カプセル皮膜が厚くなり、バッグを締め付けたり、形を歪ませたりすることがあります。
カプセル拘縮防止薬の服用や、挿入するバッグを拒否反応の起こりにくいテクスチャードと呼ばれるタイプを選ぶなどで対処することができます。
脂肪注入も同様で安静にし、3ヶ月はマッサージなどは厳禁です。特に最初の2週間は、事前に用意した適切なサイズのブラジャーで寄せて挙上した状態を維持するようにします。注入した脂肪が定着し、バストに馴染むまでの間の安静期間が必要です。
豊胸手術の中で、最も手軽でアフターケアも気を使うことが少ないのがヒアルロン酸注入です。1番気をつけなくてはならないのは感染症なので、シャワー時に傷口に気をつける、飲み薬があればしっかり飲むことが大切です。ヒアルロン酸注入で、術後にしこりが気になるという事例があります。ヒアルロン酸注入は1箇所から注射器で注入するので、大量に入れるとバスト内のどこかで停滞することがあります。それがしこりとして感じられるのです。
あまり目立たないようならば、放置しておいても問題ありませんが、気になるようなら注射器で吸い出したり、ヒアルロン酸溶解の治療を受けましょう。
参考:脂肪注入による乳房増大術 2009/2 東京大学形成外科 吉村浩太郎