理想のバストに近づくことができる豊胸手術は、胸の形や大きさにコンプレックスを持つ女性には、かなり気になる存在です。プチ整形の登場からも感じられるように、美容整形への心理的ハードルは、以前に比べてかなり身近になってきています。とはいえ、豊胸手術に関する知識は、まだまだ一般的とは言えません。特に豊胸手術にまつわるリスクや、術後の検診やメンテナンスについての知識は、中々広まりにくいようです。そうかと思えば、誤った知識がネットを通じて急激に拡散されるなど、豊胸手術に興味を持つ方の混乱は増すばかりです。
このページでは、豊胸手術と女性にとって大きな関心ごとでもある乳がんの関わりを紹介します。
結論から言えば、豊胸手術を行うことで乳がん発生のリスクが増えるということはありません。これは、単純な理屈で豊胸手術で手を加える場所(組織)と乳がんが発生する組織が異なっているからです。豊胸手術は、乳房の脂肪層にシリコンバッグ、皮下脂肪、ヒアルロン酸等を注入する手術です。一方、乳がんは乳腺組織内で発生します。正常に施術が行われた状態であれば、乳腺組織への影響は極めて少なく、実際に発がん率に差が発生したという報告はありません。
前項で「正常に施術が行われた状態であれば」という書き方をしましたが、2011年にフランスのポリ・アンプラン・プラテーズ(PIP)社のシリコンバッグが体内で破れる恐れがあるとフランス保健省が警告を出す出来事がありました。同社はシリコンバッグの材料として、安価なマットレス用の材料を使うなど品質にも問題があり、発がん率も高いとの噂も広まりました。フランス保健省は、他社製品と比較して発がん性の異常は認められないとしながらも、バッグの破損による炎症等の人体への影響の恐れがあるとして、予防措置としての除去手術を勧告しました。PIP社の製品は、日本では承認されていませんが輸入して使用された可能性もあると、厚生労働省からも情報提供が行われました。(フランス製の豊胸用シリコンバッグ製品に関する情報提供/厚生労働省/平成23年12月27日)
このような事例からも、豊胸手術は信頼できる医師の元、慎重なカウンセリングを受けて行うべきです。
豊胸手術そのものと乳がんの関係性は低くても、豊胸手術を行った方の乳がんによる死亡リスクが高くなると言われることがあります。
これは、豊胸手術を行った方の乳がん検診の利用率が低いこと、検診を受けても検査の精度が低下することがある、そしてシリコンバッグなどによって病変の摘出が行えない可能性があることが原因です。(豊胸術実施者のマンモグラフィー検査に係る見解/日本乳がん検診精度管理中央機構/2006年1月27日)
上記の見解はやや古い通達によるものですが、2016年の国立がん研究センターの乳がん検診Q&A(乳がん検診Q&A/2016年10月5日)でも、検診の精度低下には触れられており、手術を行っていない方と全く同じにはできないということがわかります。
だからといって、乳がん検診をおろそかにすべきではありません。豊胸手術を受けていることをきちんと申告し、検診を受けるべきです。シリコンバッグによる豊胸の場合は、バッグの破損や移動のリスクがあるため、マンモグラフィーが難しくなります。その場合は、超音波や触診、問診などその他の方法で代替策を提案してくれる医師を探しましょう。
ただ、乳がん発見の精度でいえば、マンモグラフィーはその他の方法よりも優位性の高い方法です。脂肪注入やヒアルロン酸注入による豊胸手術なら、マンモグラフィーも可能です。それでも乳がん検査の際には、どのような施術を受けているかをあらかじめ申告するようにしましょう。
美容外科医によっては、乳がん検診のアフターフォローを実施している医院もあります。一般病院で豊胸手術の説明をして、検診を受けるよりもスムーズに検査を受けられるので、そのような病院を探すこともよい方法です。また、乳がん検診以外でも、手術後の検診、相談は大切です。シリコンバッグの破損や移動がないか、脂肪注入でも注入した脂肪に異常が発生する場合もあります。術後の相談、検診がしやすい医院を選択することは、思い切って行った豊胸手術の成果を維持するためにも、乳がんなどの病気の予防にも大切なことです。